令和元年度、興陽高校はスマート農業による未来の農業を支える後継者の育成をテーマに掲げ、県の新規事業「高等学校魅力化推進事業」としてスマート農業学習プログラムの開発に取り組んでいます。以下にその概要を示します。

(1)GPS機能を有する農業機械の活用と施肥技術の改善(学校独自予算)
◇ヰセキ農機のGPS直進アシストと可変量施肥のできる最新型の田植え機の導入
田植え時に電気伝導度(EC)を測定し、残存肥料を差し引いて均一な施肥を実現
する。減肥効果が期待でき、倒伏防止にもつながる。
(2)ドローンの操作と画像解析(JA共済連支援等)
◇リモートセンシングおよび葉色解析サービス
専用ドローンを使って水田の上空から撮影した写真を画像解析し、稲の生育状況を分
析するサービス(ファームアイ(株))を利用する。これにより水田の肥料成分のば
らつきを把握し、肥料代の節約、生育揃い向上等の生産性向上のためのデータを収集
する。
◇学校所有のドローンで水田の上空から撮影した写真を使って、葉色分析をするシス
テム(スカイマティクス(株) いろはシステム)を利用する。これにより稲の生育
状況を把握し、収穫適期を判断する。リモートセンシングで得られたデータと比較
し、学校の授業で活用できる生育診断ツールとしての可能性を検討する。
(3)GAP認証用アプリの活用(JA共済連支援等)
◇タブレットを2台導入し、GAP実践に必要な農作業の記録(施肥管理、栽培管
理、農薬散布等)を農場アグリノート(経営日誌アプリ)を使って実践する。1台
は管理者用、もう1台は生徒用である。GAP教育の一環として作業記録の共有化を
図り、作業の効率化に繋げる。
(4)ドローンを使ったプログラム学習(JA共済連支援等)
◇プログラム学習の一環としてプログラム言語スクラッチによるドローン制御につい
て学習する。農業分野における環境制御の学習に繋げる。小型ドローン(tello)、ノ
ートパソコン
(5)環境制御アルスプラウトシステムの導入(JA共済連支援等)
サイドビニール、内張ビニール自動開閉装置 自動かん水装置
◇校内パイプハウス内(トマト栽培ハウス)に低コスト環境制御システム(アルスプ
ラウトシステム サカタのタネとワビット(株))を導入する。このシステムはUE
CS(ユビキタス環境制御システム)により、暖房機や換気装置等をコンピュータで
制御でき、インターネットを経由して遠隔地から制御することが可能となる特徴があ
る。比較的低コストでそれぞれの栽培環境に応じた対応が生産者自身で調整できる特
徴がある。このシステムの導入により栽培環境をリアルタイムに把握でき、より最
適化された栽培環境を実現できるようになると共に、農業の働き方改革にも繋がる
次世代の農業技術である。近年、導入の進んでいるこのシステムを教育現場に導入
し、教材化を検討する。
(6)普及型環境制御システムの開発(JA共済連支援等)
ラズベリーパイ、センサー等 タブレット・ルーター 実験用ハウス資材
◇ラズベリーパイ(汎用コンピュータ)と各種センサーやリレー等で構成される農業
学習に活用可能な簡易型環境制御装置を製作する。市販のIOTアプリ「BLYN
K」を活用し、遠隔地からのハウス環境情報の把握と灌水等の環境制御を行う。スマ
ート農業の教材としての活用を想定しており、専用の実験用ハウスを設置して、実
証試験を行う。なお、学校の公開系ネットワークではプロキシ接続の問題があるた
め、一般農家での使用環境同様にグローバルIPを持ったポート開放機能のあるネッ
トワークの活用を検討する。
用語について
※1 スマート農業とは、ドローンや無人トラクター、ICTやIOT、AI、クラウドサービス等を活用し、省力化や高品質生産を目指す次世代型農業のことを言います。
※2 リモートセンシングとは、対象物に触れることなく、離れたところから形状や性質などを観測する技術のことを言います。ここではドローンで撮影した画像を解析して、植物の栄養状態を把握し、経営に生かす技術のことを言います。
※3 環境制御とは、農作物の栽培環境や生体情報を「見える化」(環境モニタリング)し、温室内の温度や湿度等を制御し、最適化を図ることで、生産性、収穫量・品質の向上に役立てることができます。